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南正一郎 クリエイティブディレクター

オンオフ問わず「体験」に没頭する
クリエイティブディレクター

PROFILE
2005年新卒入社。デザイナー、アートディレクター、プランナー、営業とあらゆる職種を歴任。現在はクリエイティブディレクター兼マネージャーとしてクリエイターが働きやすい組織づくりに取り組む。専用の倉庫を持つほどのスニーカーコレクターでもある。

あなたがつくっているものは?

欲。

いい体験とは、人間の欲望を心地よく刺激するものだと思います。そして、欲望によって人の行動は変化します。例えば、格好いいランニングシューズの存在を知ったことをきっかけにランニングに興味を持つ可能性があります。ランニングを実際に始めたら、より健康になろうと生活を見直すことになるかもしれません。私たちの仕事は欲を刺激し、行動の変化や、そのきっかけをつくり出すこと。体験づくりを通じて、世の中をよりポジティブな方向に向かわせたいと考えています。

どんどん便利な時代になり、ネットショッピングなどスマホのボタン一つで簡単に欲が満たせる状況になっている。しかし、インスタントに欲を満たせる環境が必ずしも豊かだとは思いません。私たちの提供する空間デザインは、わざわざ足を運ばなければ体験することのできない、ハードルの高いもの。そんなリアルな空間を通じて、良質な欲望を生み出していきたいです。

仕事をする上で大事にしていることは?

「なぜ?」を追求すること。

仕事において結果はもちろんですが、そこに至るまでの過程や、動機も同様に重要だと考えています。イベントに訪れた人が「なぜ来てくれたのか?」、「なぜ写真を撮るのか?」、「それを通じてどんなことを感じているのか?」等、来場者の目線に立って解釈することを意識しています。また、ブランディングにおいても、企業がなぜ生まれたのか、なぜ商品が生まれたのかなど本質に立ち返って、クリエイティブを設計するようにしています。

大げさにいえば、この仕事の本質は、人の気持ちを考え、理解することだと思うんです。そのために自分自身が常に新鮮な心持ちでいられるよう「なぜ?」と問い続けています。

今、夢中になっていることは?

山登り。

生活の中にもアイデアの種は無数にあるので、オンオフ分けずに色々なことにチャレンジしています。その一つが山登りです。昨年始めたばかりなんですが、すっかりハマってしまいました。山は登っている数時間の間に状況が変化し続けます。気温、気候の変化はもちろん、急に霧がかかったりと、日常生活の中では味わえないような変化が立て続けに起こる。これは非常に良質な体験に感じます。

近年は、博展の仕事においても自然現象のマテリアルを空間デザインやインスタレーションに取り入れるようにしています。例えば、屋外のイベント会場に霧を発生させてみたりとか。人の手によって完全にコントロールできないからこそ、偶発的な美しさが生まれるし、体験の質が上がる。常に新しいものを取り入れ、実験をしています。

あなたの10年後の姿は?

良質な体験を生み出す組織をつくっていきたい。

博展では、一人ひとりの「やりたいこと」が原動力となって仕事がつくられています。一つ目標が叶ったらまた新しい欲望が生まれ、新たなやりたいことが出てくる。このサイクルをつくりたい。そのために、クリエイターが働きやすい環境や評価制度をより充実させていく必要があると考え、実際に取り組んでいるところです。

また、昨年は一般の方々に向けて『光と影が舞う涼空間「舞すだれ」』という作品の制作・展示を行いました。現在は自主プロジェクトという位置付けですが、今後は世の中に対して博展を知ってもらう機会を増やしていきたいと考えています。私たちが行っているエクスペリエンスマーケティングは、まだまだ世の中に認知されていません。良質な体験をより広く提供するために組織づくりに取り組んでいきたいです。